2008年08月08日
まるで戦争中
厳戒態勢は中国全土に、
「まるで戦争中」との声も
2008年8月7日(木)02:14
8日開幕の北京五輪を前に、厳戒態勢は北京だけでなく、中国全土に及んでいる。
◆瀋陽…タクシーもテロ警戒◆
【瀋陽=末続哲也】上海同様、サッカーが行われる遼寧省瀋陽。市当局が、タクシー運転手に「重要治安情報を提供すれば、最高50万元(約750万円)の報奨金を出す」と通知し、2万台近いタクシーが“パトカー”になった。
ただ、「テロリストの発見は素人には無理」(35歳のタクシー運転手)との声もあり、市当局は、重要情報を提供した一般市民にも、同様の報奨金を出すと追加発表した。
路線バスの警備では、860人の私服警官が乗り込む措置を決定。新疆ウイグル自治区で武装警察部隊への襲撃事件が起きた直後の今月5日には、予備役兵1000人を路線バス警備に正式投入した。
市内では、当局の指導の下、約8万人の市民ボランティアが組織され、街の随所で目を光らせる。選手団のホテルに隣接する住宅地には、「(警備の都合を考えて)外出を極力控えましょう」と呼びかける文書まで張り出された。
警備が強化の一途をたどるなか、根拠不明のうわさも飛び交う。今月2日には「鉄道を爆破する」と地元警察に電話をかけた男が逮捕された。男は「驚かせたかっただけ」と供述、テロとは無関係と見られるが、こうした事件も当局を刺激する。地元当局者は「五輪警備で問題が起きたら、幹部のクビが飛ぶ」と話した。
住民側には、戸惑いもある。タクシー運転手の男性(40)は、「タクシーの交通違反取り締まりが強化され、夜間客も激減した」と嘆いた。
◆上海…50メートルおきに武装警官◆
【上海=加藤隆則】男女サッカーの計12試合が行われる上海市中心部の「上海体育場」と、近接する選手用ホテル「華亭賓館」は7月20日以降、「電流注意」の表示を掲げた金網フェンスで囲まれた。
体育場は市民が気功やダンスを楽しむ憩いの場だったが、一般の立ち入りが禁止され、武装警察が50メートルおきに立つ厳戒ぶり。警備には人民解放軍の兵士ら1万5000人が投入され、通りかかった女性が「まるで戦争が始まるみたい」と驚きの表情を見せた。
体育場の敷地内で営業していた大手スーパーや飲食店もすべて閉鎖。華亭賓館は約800室のうち、五輪関係者用の約300室以外は予約を受け付けず、空室のままだという。
最寄りの地下鉄駅では、所持品すべての検査器通過が義務づけられている。路線バス計1600台には監視カメラが設置され、下水道もカメラによる監視体制が敷かれる。市当局は、テロ情報の提供者に最高で50万元(約750万円)の賞金を出すと呼びかけている。
上海では5月、通勤ラッシュの路線バスで、乗客の持ち込んだ可燃物が炎上、3人が死亡、12人が負傷した事件が未解決のままだ。7月には、男が刃物を持って警察署を襲撃、警官ら11人を殺傷する事件が発生しており、不安をいっそうあおる結果となっている。