2008年06月30日
〔腕の見せどころ〕

「ノー」というお客様には、「そのとおりです」
商品の説明をするとき、自分ばかり話をして、お客さまを聞き役にしてしまう営業マンがいます。
ひととおり話し終えてから、「いかがですか?」と言うのですが、これはうまい方法ではありません。
お客さまの発言には、すべて肯定で答えよう
営業する上で大事なのは、お客さまが商品について、どのような印象を持っているかを知ることです。
それには自分ですべて話さず、お客さまが話すように仕向けることです。
たとえば高価なカップを売りたいときなら、「このカップは、来客用にぴったりですよ」と言うのではなく、「お客さまなら、このカップを見て、どういうときに使いたいと思われますか」と尋ねるのです。
答えは人によってさまざまです。「丈夫そうだから、子ども用にぴったりかも」と言う人もいれば、「花柄は母が好きだから、母へのプレゼントにいいかも」と言う人もいます。
正しい解答などありません。
営業マンは、ただ「それは素敵ですね」と頷けばいいのです。
中には「把手が変わっているから、うがい用に向いてそうだね」と茶化す人もいるでしょう。
そんなときでも、「それはもったいないですよ」「そんな使い方する人、いませんよ」と否定してはいけません。
どんな答えであれ、必ず肯定することが重要です。
「いいアイデアですね。高級なカップですから、これでうがいをすれば、風邪をひきにくくなるかもしれません」というふうに、相槌を打つ。
その上で「そんなお客さまにこのカップでお茶を飲んでいただければ、カップの高級感がいっそう引き立ちそうですね」と言えば、相手も悪い気はしないでしょう。
いずれにせよ、最悪なのは無視をすることです。
お客さまの発言には、とにかく肯定的に反応する必要があります。
肯定的な反応を示す人には、お客さまはよい感情を抱きます。そこから、商品を買おうかなという気も起きてくるものなのです。
「ノー」と言うお客様には、「そのとおりです」
お客さまの発言に、常に肯定的に答えなければならないのは、クレーム対応でも同じです。
お客さまが「この商品はおかしい」と言ったときは、「そんなはずありません」と否定するのではなく、いったん「そのとおりです」と肯定するのです。
人には、「一度肯定したものは肯定し続けたい。一度否定したものは否定し続けたい」という心理があります。
前回の「新車を購入した人は、2年経ってもそのクルマを新車と思っている」という心理と同じです。
これをセールスに当てはめると、お客さまがいったん「ノー」と言った場合、「イエス」に変えるのは至難の業です。
お客さまが「ノー」と言った場合は、まず「そのとおりですね」と肯定したほうがいいのです。
お客さまの「ノー」に対し、「いえ、それはイエスです」と言えば、お客さまと営業マンは敵対関係になってしまいます。
これでは、売れるものも売れません。大事なのは、お客さまと営業マンが“仲間”になることなのです。
たとえば「この店の商品は高い」と言われたとします。
このとき、「そんなことはありません。うちは安いですよ。だから、こんなに売れているんです」と応じれば、お客さまの「ノー」を否定したことになります。
そうではなく、「よく高いと言われるんです。申し訳ございません」と一度肯定する。
その上で、こちらの言い分を伝えるのです。「だけど『高い』とおっしゃったお客さまも、今は大ファンになっているんですよ」と言えば、お客さまは「それは、なぜだ」と聞いてくるでしょう。
「というのも、どれだけ頼んでも納期をきちんと守るし、不良品や欠陥品もない。買ったあとの手間がかからないので、結局は安いねと言ってくださるのです」
こう言えばお客さまも、こちらの話に耳を貸す気になります。
「確かに納期を守ってくれることは重要だ」となり、「高いけれど取引してもいい」と考えるようになるのです。
お客さまのクレームは、とりあえずすべて肯定する。
その上で、いかに納得してもらうように話をもっていくかが、営業マンの腕の見せどころでもあるのです。

